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ハルシオンをくれという患者

時々外来で、睡眠薬を指定して要求してくる患者がいる。「以前使っていて、よく効いていた」とか、「知り合いがこの睡眠薬を使っているが、よく効くので勧められた」などと言って、同じ薬を自分にも処方するよう言ってくるのだけれども、ハルシオンやサイレースのデメリットを説明して、基本的には断るようにしている。

もともと重度の不眠で悩んでいた人ならともかく、そういう要求をする人のなかには、眠剤をまったく使用していない人も少なくない。最近は依存性の生じにくい新規睡眠薬も出ているので、余計にそういう古くからの強い眠剤に対して慎重にならざるを得ない。もっとも価格はジェネリックで圧倒的に安いので、医療経済的にはある程度考慮すべき案件なのかもしれないが、それでも不眠の患者にいきなりハルシオンやサイレースを処方するクリニックはほとんどないだろう。

地域によっては、他人の睡眠薬を平気で流用して使っていたり、一部では犯罪まがいのことに使ったり、路上で売りさばいていたり、といった可能性もなくはないし、また生活保護が多い地域では役所から問い合わせが来ることも多いので、慎重になるに越したことはない。ベンゾジアゼピン系の向精神薬に関しては、近年認知面に与える悪影響が判明しつつあるため、否定的な見解も多いが、適切に使用できればQOL向上に寄与することは間違いないので、節度を保った利用を心掛けたいものである。

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